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[PS2]花と太陽と雨と

花と太陽と雨と

ハード:PS2
ジャンル :アドベンチャー
発売日:01.5.2(通常版)
価格:1,890円[税込]
プロデューサー:須田剛一氏
制作:グラスホッパー・マニュファクチュア
販売:ビクターインタラクティブソフトウエア →マーベラスインタラクティブ

飛行機に仕掛けられた爆弾を処理するために呼ばれた主人公がやってきたのは「同じ毎日が繰り返される南の島」。なぜか毎日その飛行機が爆発してしまいます。何をしても、毎日爆弾に到達できません。飛行場にすら到達できないのです。まるで壊れたレコード盤のようにリピートされる時間。夜にすらならず、知らぬ間に寝ている…。そして朝起きるとまた同じ毎日が…。その謎を解くためにストーリーは続きます。

進むたびに、「何だこれは?」という気持ちが強烈に掻き立てられます。謎が謎を呼び、というほど大げさなものではありませんが、適度な風呂敷の広げ方で、謎が増えて行きます。章立てになっており、テンポが良いです。須田氏特有の台詞回しとキャラクターは、相変わらず凄まじくサイコですので、好き嫌いは強力に分かれてしまうでしょうけれど…。テキストの形、音声、音楽、映像、他にあまり似ているものが見当たらないです。そして、台詞回しは強力に洒落ています。

謎解きはそれほど難しくないですし、ストーリーは一本道です。ですが、私はそこが重要だと感じています。もしこれがマルチエンディングだったら、この色彩は無くなってしまうと思います。おまけ要素もないし、収集癖を満足させるものもありません。ですが、だからこそ「作品」として成立しているように感じるのです。

ですから、アドベンチャーというよりは、「プレイヤーが参加する映像作品」という、以前飯野賢治氏が「Dの食卓」でやろうとしていたことを思い出す表現が出て参りました。でも、近いと思います。

で、参加できる映像作品であるが故に、狂気の世界がより肌で感じられるようにも思います。これは「花と太陽と雨と」だけではなく、須田氏の代表作品(「ムーンライトシンドローム」「シルバー事件」「Killer7」)から受ける、私の印象です。須田氏は、以前ファミ通のインタビューにて「いつも1つのことを表現している」と言っていたように覚えています。おそらく、それは「狂気の世界」なのではないかと思います。ただ、幾度かこのブログ中にも書かせて頂いてますが、須田作品の狂気は「作為的な色彩」が強く、純粋に「本物の狂気」と呼べるかどうかは微妙な所ではあります。それでも、ゲームというカテゴリの中では、「芸術作品」の1つだと感じます。逆に言えば、「ゲーム」として見た場合にはどうしても評価は下がると思います。

ちなみに、須田氏の作品は、出る度に違う所から販売されております…。 最初須田氏はHUMANにいたのですが、「トワイライト シンドローム」を、蒸発した開発者から引き継いで後編を制作。須田イズムの開花だと私は思っている、トワイライトのキャラクターを使用した「ムーンライト シンドローム」を制作。ここまでがHUMANでした。HUMANを退社後、制作会社としてグラスホッパー・マニュファクチュアを設立します。そしてアスキーで「シルバー事件」、ビクターインタラクティブソフトウエアで「花と太陽と雨と」、スパイクで「ミシガン」、カプコンで「Killer 7」をそれぞれ販売……。で、「コンタクト」はマーベラスインタラクティブです。これらの情報が何を意味しているのかは分からないですが。 この辺りの事情は下にコピペしたページから垣間みることができるかもしれません。トワイライト・シンドロームを制作していた際のドロドロした感じをそのまましゃべっています。

http://eg.nttpub.co.jp/news/20030116_04.html
http://eg.nttpub.co.jp/news/20030117_06.html

ちなみに、「花と太陽と雨と」は、須田氏いわく暗黙の了解事項だそうですが、一応「シルバー事件」の続編です。