テレビゲームとサイコさん 本館

[GC/PS2]Killer7

Killer7

ハード:ゲームキューブ/PS2
ジャンル:アクション・アドベンチャー
メーカー:カプコン
制作:グラスホッパー・マニュファクチュア
プロデューサー:須田剛一氏
価格:7,140円[税込]
発売日:05.06.09

須田剛一氏プロデュース作品です。

7つの人格を交替しながら、ヘブンスマイルと呼ばれる「奇病」を発症した人間たちを倒し、謎を解いて行きます。人格を交替すると、身体も入れ替わるというのが強い特徴です。

ボランティアの女子大生にいたぶられる車椅子の老人。その老人は伝説の殺し屋。体中に拘束具を纏った付き人。情報をくれるのは、殺し屋である主人公「killer7」がかつて殺した人間達の残留思念。イった会話を、イった状況で交わす少女。というように、登場キャラクターを並べただけで、とんでもないことになっています。

ただし、それらがグロテスクではなく、スタイリッシュに描かれています。これが凄いと思うのです。須田氏が画像の美しさを求めず、独特のグラフィックを用いたことが大きな要因なのでしょう。

「知識」による作為的な部分も強く感じますが、それを差し引いても素晴らしいと思います。映画「ツインピークス」「イレイザー・ヘッド」「マルホランド・ドライブ」などを手がけたデイヴィッド・リンチ監督の作品が近いように感じます。しかし、キャラクターを自分で操作し、音声と同期したテキストを自分のペースで読む、というテレビゲームでしかできない行為が、その世界にのめり込ませます。そして、キャラクターの魅せる動きや台詞が脳天にガツンと来ます。この台詞回しも須田作品の大きな特徴です。

結果として、「狂気」と呼ばれる世界がかなりのレベルで表現されていると思います。こういった世界観は、下手をすると野暮ったくなったり、単に意味不明なだけで終ってしまうことの方が多いのでしょう。killer7も意味不明に思えてしまう方が多いのかもしれませんが、それぞれのモチーフに託された「喩え」が何なのかを考えるだけで楽しいです。考えさせる「意味不明」と、ただ支離滅裂なこととは別物だと思います。一応、私の中ではどれが何を喩えているのか、の解答は出ています(合っているかどうかはわかりませんが)。

ゲームとして見た場合、操作する楽しさはあまりありません。おまけ要素も(あるにはありますが)ほとんどありません。ですが、これは「テレビゲーム」という媒体を使った高度な映像表現であり「自分が操作して参加できる、インタラクティブ映像作品」として捉えた場合、killer7の価値は跳ね上がるように感じます。